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Greenの力で広げる循環型社会への道


【ゲスト講演②】



武岡 慶樹

株式会社 カネカ

常務執行役員

Global Open Innovation 企画部長



地球的課題のソリューションプロバイダー


高齢化が進み、さまざまな困難が予想される中で、持続可能な社会を作っていく取組みをカネカは行っている。「カネカは世界を健康にする。KANEKA thinks“Wellness First”」という考えのもと、地球全部が健康になることを目指し、技術や素材を活かしていく。地球規模の社会的課題である「環境・エネルギー」「健康」「食料」に対するソリューション・プロバイダーになることを目指すものだ。


 


プラスチック環境汚染問題への取組み


重点化している取組みの1つは、生分解性の素材である。1年間に海へ流入するプラスチックは約800万トンだ。世界中で4億トン強のプラスチックが製造されているために、約2%が毎年海に流れている。2050年には、海に堆積するプラスチックの重さが全ての魚の重さを超えるとして、警鐘が鳴らされているのだ。

2019年のG20大阪サミットにおいて、2050年までにプラスチックごみなどによる新たな海洋汚染をゼロにする国際目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有された。2023年のG7広島サミットでは「2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心」が合意に至った。

「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束」が2022年に採択されたことを受け、政府間交渉委員会(INC)において条約策定に向けた交渉が進められている。



 

プラスチックの代替素材開発と資源循環


30年前から研究開発を進め、バイオ技術と高分子技術の融合によって、Green Planet(化学名はPHBH)の開発工業化に成功した。100%バイオマス由来で、土中だけでなく海水中でも生分解されるバイオポリマーである。

弊社では、売上高の5%を研究開発に回しており、今年度はそのうちの4分の3をライフサイエンス領域に投資する考えだ。

植物は、空気中にある炭酸ガスと水を光合成によって自分の中に固定する。そして生まれた植物油などのバイオマス素材を原料に、微生物によってGreen Planetは生産されるのだ。化学的にはポリエステルのような構造であり、汎用プラスチックの特性を損なわないという特徴を持つ。



Green Planet製品は、微生物により再び炭酸ガスと水に生分解されるために、温暖化の原因になるものを増やすことはない。堆肥化する、土壌の中でも海水中でも生分解する、バイオマス由来である、食品包装用の利用が可能など、世界中にある様々な認証制度において認証取得済みだ。

土壌中のGreen Planet製のカトラリーは、5ヶ月でほぼ分解された一方、木製は3分の2ほど分解された。従来のポリプロピレン製は変化なしであった。海水中は菌の濃度が低いために、分解は比較的ゆっくりで、ストローだと3ヶ月くらいで分解される。なお深海にも菌は存在する。



Green Planet(PHBH)の用途拡大


高砂市にある工場で、年間2万5千トンの規模でGreen Planetを生産している。2030年までに、10万トン規模に持っていきたい。2022年4月、「プラスチック資源循環促進法」が施行された。特定品目を環境配慮型、生分解型の素材に切り替えなさいというものだ。そこで弊社では使い捨てプラスチック製品の用途拡大を進めており、カトラリー、ストロー、買い物袋、農業用マルチ、食品包装などにGreen Planetは使われている。


Green Planetを使った農業用製品は、人口減少や高齢化による働き手不足に対応できるとして注目されている。畝を覆う従来型の農業用マルチは、塩ビやポリエチレン製であったために、作物を収穫後に回収して捨てる手間がかかっていた。Green Planetなら、耕運機あるいはトラクターで土と一緒に混ぜれば、次に作物を植える頃までには微生物によって分解される。種苗メーカーで購入する育苗ポットも我々の素材だ。そのまま埋めるとやがてなくなるために、植え替えの手間を省ける。


 

コンポスト化、バイオガス化による資源循環


環境省「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択された。

京都市の京北地区において、使用済み油(廃食用油)を原料にGreen Planet製の生ごみ回収袋や食品容器を生産するという実証だ。Green Planet製品と生ごみをバイオガス化すると、メタンガス、消化液、発酵残さが得られる。メタンガスは、ガスタービンを回してエネルギー回収することで発電への利用が可能だ。消化液・発酵残さは、液体肥料として作物に使われる。これにより、大きな資源循環が生まれるのだ。




CO2を原料にしたGreen Planetの生産


経済産業省の後押しで、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としてカーボンリサイクルの推進」に採択された。バッカス・バイオイノベーション社など複数の企業と組んで、一社ではできない高度な技術の研究を行っている。

水素酸化細菌に着目し、空気中の炭酸ガスから直接、Green Planetと同じものを作るのだ。バイオものづくり技術に磨きをかけて、プロセスイノベーションをしたい。

 


情報発信の取り組み


資源循環になると、なかなか理解がない。そこで児童向けにGreen Planetを題材とした独自の環境教育教材を株式会社ARROWSと制作した。さらにInstagramnoteなどのSNSを活用した、情報発信の取組みも行っている。

弊社は、今後もGreen Planetの展開を通じて環境汚染問題の解決、人間社会の発展に貢献していく。

 

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