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子どもたちが「ちゃんと」食べ続ける未来を創るための考察と実験

WHGC分科会 「食と未来」グループ(2023年10月発表)



1.「食」から考える日本の未来



食料安全保障が重要とわかっていても、食料自給率が低いままなのはなぜなのか。


こうした疑問から出発し、食を起点に日本の課題と目指す姿について、私たちのグループでは議論をおこなってきました。


ただ、食の問題は複雑で対象も広いので、まず私たちが考える「ありたき姿」を次のように定義しました。


「我々の子供たちがちゃんと食べ続けられる未来を創りたい」


その上で、この「ちゃんと」とは何かを掘り下げていくことを通じて、課題を特定し、解決に向けた糸口を考えていくのが、WHGC分科会「食と未来」グループの活動となります。

様々な学びの中から捉えた仮説と、アクションプランについて、レポートします。



2.そもそも日本の「食」の現状とは



有識者の方々に、日本の食に関する現状や課題について、お伺いしました。

様々な事実やデータの中から、私たちのグループが着目したのは、次の3点です。

  • 食料自給率が38%という低い状況であること

  • 米の自給率は99%と非常に高い状態にあること

  • 米の消費量は50年間で半減していること


お米の自給率は99%と高いものの、お米を食べる量は大幅に減って、その代わりパンやパスタなど小麦粉の消費が増加。それが輸入中心のため、自給率が低下。

私たちの食生活は、そこから大きな変化はしていないので、食料自給率も変わらない。

そうした構造が改めて見えてきました。


ただ、食料自給率の低さは、食料安全保障の点からは非常に危うい状況であり、子供たちがちゃんと食べ続ける未来のためには、現状を変えていく必要があります。



3.食料安全保障では「お米」がカギ



米の自給率は99%ですが、何となく100%がゴールのように誤認していることに、有識者の方々からの学びから、改めて気付かされました。

主食である米の自給率は、200%でも300%でも良いのです!

すべてを日本国内で消費する必要はなく、輸出していけば良かったのです。

それだけの生産量があれば、有事の際には、国内に回せる。

それが食料安全保障のカギでした。


自給率が16%である小麦粉の生産量を高めていく方向もありますが、雨の多い日本の気候から小麦の生産を大幅に増やしていくことは難しいことも学びました。

逆にお米は、減反政策が取られ続けているくらいですから、増産の余地は大きく、農地を集約して大規模にしていくことで、生産性も高めていくことが可能だったのです。


子供たちが「ちゃんと」食べ続けられる未来を考えていくとき、生産側の方は、私たちが取り組めることは少ないため、消費側の方で何ができるか、特にご飯としてお米を食べるのではなく、他の用途の可能性を中心に議論を進めました。



4.子どもたちが「ちゃんと」食べ続けられる未来に向けてのカギ


量と質の2つの側面から検討を進めました。


まず量の面です。

食料安全保障の点から、米の生産量を増加することに加え、米の消費需要を安定的に創出することが課題と捉えました。


そのためには、お米の魅力を再認識させる場を作ることで、主食のご飯としての消費だけではない、小麦粉からお米に消費が置き換わるような食生活に少し変わり、ひいては自給率の向上につながる、ということが一つ目のカギです。


次に質の面です。

子どもたちが、単にお腹を満たすだけではなく、日本人らしい最低限の食、栄養素を摂取できていないケースが増えていることが課題と捉えました。


そのためには、子どもたち自身が摂るべき必要な栄養素を理解し、さらにはその作り方を身につけることで自立できていることが理想です。

そうした子供が自立して食をとれるような、子供への食育の場を作っていくことが、2つ目のカギです。


この2つのカギから、子どもたちが、ちゃんと食べられる未来につながっていくのか?

私たちの仮説を実験してみることにしました。



5.「米粉のおやつ作り料理教室」を開催




お米の魅力を伝える「米粉おやつ作り教室」を小学生の親子を対象に開催しました。

講師に料理研究家の大畑ちつるさんを迎え、米粉を使ったパンと小麦粉を使ったパンの食べ比べや、米粉のおやつを自分で作ることに加え、食料自給率について「学ぶ」ことをやってみました。


「米粉おやつ作り教室〜学ぶ」の資料

→→ ダウンロード (PDF)


「米粉おやつ作り教室〜作る」のレシピ

→→ ダウンロード (PDF)





ご飯以外でも、「お米は美味しい!」「食べたい!」「また作ってみたい!」という声が多く出てきました。


また、小学生には「食料自給率」の話は難しいかと懸念していたのですが、食料自給率を高めることは大切で、そのためにもお米はもっと食べた方がいい、と子どもたちが理解してくれました。


取り組みとしては小さな一歩ですが、方向としては、お米の価値を再認識するきっかけとなることが分かりました。



6.まとめ



食料安全保障から見て、米の生産量の拡大、そしてそれを支える需要の拡大が重要です。

需要拡大には、内需と外需がありますが、ご飯としてお米を食べるだけではなく、今回の料理教室のように「米粉パン」などは、グルテンフリーな食品として海外でも注目され始めています。他にも需要拡大の余地はたくさんありそうです。


また、子どもたちが食料自給率そのもののを課題と捉え、楽しみながら自立していくことも、今後広く展開していく余地があります。



食にまつわる問題はとても複雑です。

簡単に解決できないことばかりです。

まずは、お米の消費を少しでも増やしてみる、ことからみなさんも始めてみませんか。



7. WHGC分科会「食と未来」グループ(提言者)



この提言は、World Healthcare Game Changers Forum のプログラムの一つ、WHGC分科会メンバーによって作成されたものです。(2023年10月発表)


ぜひ皆さまご自身でも、実践いただき、気づいた点、感想などを共有ください。


【お問合せは info@whgcform.org】まで



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