2022年10月17日開催

World Healthcare Game Changers Forum 2022

公益資本主義と社会の健康

〜ゲームチェンジャーを生み出す人材投資

  WHGC設立の目的と目指す世界 

寿命を全うする直前まで誰もが健康に暮らせる社会を目指して

 WHGCの理念は、寿命を全うする直前まで、誰もが健康に暮らせる社会を実現することです。ここでいう「健康」とは、人間の健康だけではなく、それを支える社会の健康も重要なテーマとしています。全ての人が健康で経済的にも精神的にもゆとりのある暮らしができる社会。このような国は未だかつてないからこそ、日本が最初に実現し、世界が憧れる国となることを目指すべきなのです。
 しかし、日本の勤労者の平均所得は約370万円で30年前から全く伸びていません。実質賃金では1割減。非正規雇用も4割まで増えてきているのが実態です。一方、配当や自社株買いを通じた株主還元は大幅に増加しています。コ―ポレートガバナンスコードは、社員ではなく株主還元を促進する仕組みであることを認識しないといけません。

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ですから、この分配を見直すだけで社員の給与を大幅に増やし、正規雇用を増やすことは可能なのです。少子化が叫ばれていますが、有配偶者の出生率はむしろ増加しています。問題は有配偶率自体の低下であり、若い人たちの正規雇用が増え、所得が安定すれば少子化問題も改善していくことになるでしょう。

人への投資が企業の生産性を向上

 こうした成長と分配の好循環を生み出すためには、公益資本主義を理解し、実践していくことが必要となります。
 公益とは、経済的かつ精神的な豊かさのこと。企業は社会の公器として、事業を通じて社会に貢献する。そして、得た利益は、社員や地域社会、顧客、仕入先、地球、そして株主と、企業活動を支える社中(Company)に適切に分配し、中長期視点と企業家精神をもって、新たな領域へ挑戦し、持続的な成長を実現するのです。

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 そのために、企業はまず利益を上げるべきであり、生産性を向上していく必要があります。生産性を高める方法は、技術投資、インフラ投資、設備投資、人材投資の4つしかなく、このうち、投資額が最も少なく、かつ最も早く成果が出るのは人材投資なのです。

 生産性を上げ、利益を上げ、上がった利益を適正に分配し、社員と家族を豊かにする。そうした企業が増えていくことで、ゆとりのある社会が実現できていくのです。

人間と社会の健康を俯瞰的に捉えられる人材の創出を

 ではどのような人材が必要となるのでしょうか。それは世界を俯瞰して捉えられる視野と、現場感覚を持ち、自らが実践する気概を持った人材の育成です。
 WHGCは、企業の生産性を高め、新たな領域に挑戦するための人材創出の装置として、会社の枠を超えた仲間と共に、世界を変えうる技術や制度を学び、考え、議論し、発信する場としていきます。


 また、これからの日本には、新たな基幹産業の育成が重要となってきます。基幹産業は、繊維から鉄鋼、機械、自動車、IT(情報技術)へと変遷してきました。基幹産業による雇用創出は、豊かな中間層を増やす意味でも欠かせないものです。
 日本には、社会に大きなインパクトをもたらしうるコア技術が多数あり、優れた基礎研究も多数行われています。しかし、それらに十分な投資が行われていないのが課題です。こうした現状を打開すべく、未来を担う研究や技術に資金が集まるための、制度設計の実例もつくっていきたいと思います。
WHGCから、企業の未来のみならず、日本と世界の未来を牽引する人材が輩出されていくものと期待しております。

  メッセージ 

社会を変える人材が不可欠

 わが国の平均寿命は戦後、飛躍的に伸びました。今後は、人の幸せそのものを問い直す視点がますます重要となっていきます。「誰もが寿命を全うする直前まで、健康で幸せに暮らせる社会」をつくるべきだというWHGCの理念に深く共感し、その実現を強く願います。
社会が大きく変わる中、その変化に対応していくには、人が重要となります。専門分野だけではなく、物事を俯瞰的に捉え、変革を進められる人材が必要となってきます。そして、そうした人材が企業や行政において活躍できる場も必要となります。
そのためには、大きな目的を共有し、大学や企業、行政が連携することが不可欠であり、WHGCアドバイザーとして、その推進をサポートしてまいります。

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日本発のゲームチェンジを

 科学技術は、ゲームチェンジの基礎となるものです。MIT発のベンチャーで、生体工学の世界的研究者・ロバート・ランガー氏が共同創業者の一人に名を連ねるモデルナ社は、mRNAワクチンで世界的なゲームチェンジを起こしてみせました。
日本の研究人材は優秀であり、これは世界を大きく変えるのでは、と思わせる先端的研究も多く行われています。しかし、社会実装に至りにくいのが課題です。点や線ではなく、面の強さを持つエコシステムが今こそ必要なのです。
自らが社会を変えるのだという気概をもった人々が、WHGCに参加し、連携していくことで、日本から世界にゲームチェンジを起こす推進力となることを期待しています。

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  基調講演 

Connect for Well-being 〜挑戦したい気持ちを育む経営

 当社の歴史は1899年に始まりました。2019年に創業120周年を迎えたタイミングで、「ロートグループ総合経営ビジョン2030」を公表いたしました。2030年にありたい姿として掲げたのは「Connect for Well-being」というビジョンです。
ウェルビーイングを、心身共にイキイキと、様々なライフステージで笑顔あふれる毎日を過ごすことと定義し、世界中の人のウェルビーイングのために貢献していく決意を込めたものです。

 ビジョンの実現に欠かせないのが「Connect(つなげる)」です。製薬やスキンケアなどの多岐にわたる事業領域や、長年の歴史の中で培ってきた研究をつなげる。また、社内外の仲間や組織もつなげていく。そうした、幅広い意味での連携、Connect が生み出すシナジー効果を、人々のさらなるウェルビーイングへとつないでいきたいと、考えます。

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 そして、人々のウェルビーイングを実現する企業であるためには、まず自分たちが心身共に健やかでなければなりません。そうした考え方から当社は、社員のウェルビーイングの実現を経営の重要課題と位置付け、様々な取り組みを実践しています。
 また、社会人としての健やかさは、成長意欲をもって、自律的に働くこととも深く関係してきます。当社の行動指針の一つに「まず人がいて、輝いてこそ企業が生きる。主役は人。」があります。社員一人ひとりが「プロの仕事人」となるよう、挑戦の機会の提供を大切にしています。立候補や手を挙げることによる自律的な働き方を尊重する「手挙げの文化」は、当社が長年にわたり大事にしてきた企業風土でもあるのです。

社員の成長と企業の成長の好サイクルへ

 社員の挑戦する意欲を伸ばすために、最も重視しているのは信頼関係の構築です。上司と部下や、同僚、他部署の社員まで含めて、社員同士が信頼し合うことがとても大切であり、信頼関係に裏打ちされた社員同士の結びつきは、石垣のように強固な土台となり、組織の一体感醸成にも大きく寄与します。
 具体的には、業務改革・意識改革を推進して改善文化を浸透させ、生産性を向上することで、社員一人ひとりが新しいことに挑戦する時間を増やしています。また、役員も含め、社員同士は「さん付け」で呼び合い、オフィスから部屋や壁を無くし、フラットな関係づくりを推進するなど、コミュニケーションの強化にも注力しています。成長意欲を高める人事・報酬制度の改善にも取り組んでおり、今年10月には、賃上げも想定した制度改定を行いました。

 

 また、社員の挑戦意欲をさらに伸ばすため、2016年から2つの新制度を導入しています。就業時間の一部を、本来の所属部署とは異なる部署での業務にあてる「社内ダブルジョブ」と、就業時間外の複業を認める「社外チャレンジワーク」です。実践者は手挙げで決めています。現在までに、それぞれの制度を100名以上の社員が実践しています。
 

 挑戦意欲を持ち、自律的に働く社員が社内外で得る経験値や新たな知見は、当社の事業にも新風を巻き起こし、さらなるイノベーションの種ともなると期待しています。引き続き、社員一人ひとりの仕事人としての成長を、企業の成長へとつなげるサイクルを強化していきたいと考えます。

 セッション1 

企業は「社会の健康」に貢献せよ

羽生 このセッションでは「企業は『社会の健康』に貢献せよ」と題し、人と社会の健康にまつわる諸課題の解決に、企業はいかに挑戦し、貢献するのかを議論していきます。

五郎丸 学研グループは1946年、「戦後の復興は、教育をおいてほかにない」という創業者の信念から、教育出版を祖業として創業しました。現在は、教育出版や塾などの教育事業と、介護を中心とした医療・福祉事業を経営の二本柱に据えています。

医療福祉事業を開始したのは2004年。もともと医学書・看護書の出版は手がけていましたが、高齢化率の高まりを背景に、サービス付き高齢者向け住宅の提供に着手しました。その後は着々と事業規模を拡大し、現在では介護保険サービス全般や認知症グループホームを展開。医療福祉事業は、当社の売り上げのおよそ半分を担うほどに成長しています。

吉田 日清食品は1958年に創業しました。今や世界で1000億食以上食べられている即席麵は、飢餓が社会問題だった時代に、創業者の安藤百福が「食が満たされてこそ、世の中は平和になる」という思いで開発したものです。
しかし近年、多くの先進国では飽食が問題となっています。そこで当社は、最先端のフードテックと最新の分子栄養学に、これまで当社が即席麺で培ってきた技術を掛け合わせ、おいしくて必要な栄養素をバランスよく摂取できる「完全メシ」を開発。今年5月から販売を開始しています。
実現したいのは、無理や我慢をせず、食べたい時に食べたいものを食べながら健康になれる世界です。

 東北大学加齢医学研究所で、脳の発達や加齢に関する研究をしています。医療・介護費用などを含む認知症の社会的コストは、年間約15兆円かかるともいわれます。認知症の発症予防は重要な課題なのです。
様々な研究により、飲酒や喫煙を控えるといった生活習慣の見直しなどが、予防に効果的だと分かってきています。
研究成果の社会実装にも取り組んでおり、2019年には、東北大学発のベンチャー「CogSmart」を設立。認知症リスク低減のため、脳の健康状態を可視化する脳ドックプログラムなどを提供しています。

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​時代の変化を見極め挑戦を

羽生 企業がゲームチェンジを成功させるためには、何が必要でしょうか。
 

五郎丸 やはり、成功するまでやり抜くことではないでしょうか。私自身、高齢者住宅事業に参入した当初は、失敗も数多く経験しました。しかし日本の人口動態を見れば、超高齢社会への対応の必要性は明らかです。医療福祉の充実はこれからの社会に絶対必要だという思いで事業にあたり、規模を拡大してきました。

吉田 当社の場合は、カップヌードルの成功体験に捉われ、新たな一歩が踏み出しにくくなる「カップヌードルシンドローム」からの脱却が長年の課題でした。
重要なことは、時代の変化を見極めること。今後、地球の健康を実現するサステナビリティーと、人の健康を実現するウェルビーイングを両立できなければ市場で淘汰(とうた)されるでしょう。食の完全栄養化はその危機感からスタートしたプロジェクトです。

 

 過去の経験に基づいてリスクを回避するのは、ある意味で人間として当たり前のことです。
しかし、新たなことへの挑戦に怯える必要は全くありません。脳には可塑性といって、変化する力があるのです。加齢と共に変化の速度は遅くなるが、何歳からでも脳は変化し、新しい知識やものの見方を習得できます。
ビジネスでも、臆せず新たなことに取り組み続ければ、古い慣習や既存の発想から脱却し、ゲームチェンジにつながる一歩を踏み出すことができるはずです。

羽生 ゲームチェンジを起こすために、企業は社員とどのように向き合うべきでしょうか。
 

五郎丸 経営者として、事業の将来性などをしっかりと見極めながら、覚悟をもって新しいことに挑む社員の思いを最大限尊重したいと考えています。
挑戦に失敗はつきものだが、それでもやってみる、打席に立つという企業風土をつくっていきたい。

 

吉田 現在、経営層とビジョンを共有し、密にコミュニケーションをとりながら、主体性をもって新規事業に取り組んでいます。既存事業を担う組織とは別に出島的な組織を作ることで、社内的な慣例や、従来の研究開発プロセスとは異なったフレームワークの中で、自律的かつスピーディーな事業展開を実現しています。


 社員の自発性や自律的な働きは極めて重要だと感じます。困難に打ち勝って大きなことを成し遂げるために、究極的に大切なことは、「やってみたい」という強い動機や、知的好奇心ではないでしょうか。

挑む気持ちを支える経営へ

羽生 ここまでの話で、社員の挑戦の意思を尊重し、個の力を信頼して事業を任せることも、ゲームチェンジには非常に重要と感じました。今後、企業活動を通じた社会の健康の実現や、公益への貢献にいかに向き合うべきなのでしょうか。

五郎丸 医療福祉分野では、入院による認知症の進行を防ぐため、入院をしない・させない予防的なケアに注力していきます。わが国の将来を考えれば、教育の見直しも重要です。今後、子どもの数がさらに少なくなる中で、世界に伍する人材を輩出し続けるため、教育そのもののレベルアップを図る必要があります。経済格差にひもづく教育格差も打開しなければなりません。
課題を挙げればきりがないですが、国のやれることには限界がありますし、民間事業者として、ビジネスで課題解決の道筋を示していきたいと思います

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吉田 食の完全栄養化により、健康から病気に向かう状態にある「未病」の対策や、予防医療の実現にも貢献していきたいです。
これらのほか、フレイル(加齢による心身の虚弱)予防や、女性に多い隠れ栄養失調対策など、食にまつわる課題は数多くあります当社が果たすべき役割も、まだまだたくさんあるはずです。「Beyond Instant Foods」をスローガンに、様々な企業、組織と連携しながら、挑戦を続けていきます。

 

 科学技術の領域では、それぞれに成熟した研究が行われているものの、一つひとつの成果をつなぎ合わせて知見を深めたり、新しい発見を得たりするといった取り組みはあまり行われていないのが実態です。今後、脳科学とほかの領域の研究を組み合わせ、認知症予防についての知見をさらに深化させていきたいです。
また、研究成果の社会実装も着々と進めていきます。脳の健康状態の可視化により、認知症リスク低減のための行動変容を起こせるようなサービスを世界に広めたいと思います。

 セッション2 

企業は「世界を俯瞰できる人財」を創出せよ

パネリスト

モデレーター

太田 このセッションは、「企業は『世界を俯瞰できる人材』を創出せよ」と題し、人と社会の健康を俯瞰できる人材をいかに育てていくかを議論していきます。
バイオ医薬品の研究開発などに強みを持つJCRファーマは、わが国で唯一、新型コロナウイルス感染症のワクチン原液の製造を受託する製薬企業です。この一大事業に取組むにあたり、どのように社員をまとめていったのでしょうか。

薗田 もともと、ワクチンは当社の主要製品ではなく、製造を受託できたことも偶然といえます。それだけに、体制整備などには苦労しました。
乗り越えられたのは、「チームJCR」の総力を結集して臨んだからと言えます。社員一人ひとりが、今何をすべきか、常に自分事として考え、自律的に動きました。一番の鍵は、社員の「自分事化」であったと思います。

 

髙倉 自分の考えをもって働ける人材の育成は、今日の企業にとって非常に重要なことです。従来、優秀人材といえば、与えられた業務を効率的にこなし、企業が期待する成果を挙げられる人を指しました。
しかし、世の中がこれだけ大きく変化する時代にあっては、自らが変化をリードする意欲と、多様な視点での構想力、そして行動力を持つ人材の育成が重要なのです。

 

原山 優秀さの定義は、時代や働く場所によって変化します。だからこそ、優秀と評価された人も、そうでない人も、常にプラスアルファを求めて何かを学ぶことが大切です。それによって、偶然来た流れや好機をつかめるようにもなります。新しい何かを獲得するためには、自分の居心地の良い場所を離れてみる、普段とは異なる何かに挑戦してみるといったことも大切だと思います。

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​寄り道に見える経験も重要

薗田 当社も、研究者が自分の興味に従って、業務以外にプラスアルファの研究をすることを応援してきました。その成果が、当社の研究開発を発展させた事例もあります。
しかし近年、小児稀少疾患の治療薬製造や、その世界展開を「第二創業」の決意で進めているところでして、プラスアルファの研究をする時間を捻出できていません。国際競争を生き抜くには、効率性やスピードの追及を完全に手放すのは難しく、非常に悩ましいところです。

 

髙倉 社員一人ひとりをプロの仕事人に育てるためには、一見して「寄り道」のように見える経験を積む機会も重要となります。世界を俯瞰できる人材を育てる意味でも、キャリアパスにおける寄り道が従来以上に真価を発揮するようになってきました。
当社の基礎研究のトップは、入社後の一定期間、営業部に配属されていました。彼は、「営業の経験があるからこそ、基礎研究とビジネスの結びつきが分かり、研究テーマを深堀りできている」と語っています。

原山 これからの時代、科学技術の領域では「スローサイエンス」を大切にしなくてはなりません。すぐに直接的な効果が出る研究だけでは、得られないもの、見落としてしまうものがあるからです。
同じことが、教育や企業の人材育成にもいえるのではないのでしょうか。効率性のロジックでつぶされている芽がずいぶんあるように思います。人の能力は、いつどのように花開くか分からない。その時を待ちながら、辛抱強く見守ることも大切です。

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太田 人や社会の健康に関するゲームチェンジを起こすには、挑戦する意欲を持つ人材を育てることも大切です。これにはどのように取り組んでいられますか。


薗田 当社は、挑戦したいことに飛び込んでみるという精神を大切にしており、私自身も、社員から「こういう研究に興味がある」と相談された時には、「まずやってみたら」と背中を押しています。研究や実験は、必ずイエス・ノーの結果が出るものです。それを事業につなげるかどうかは、しかるべき立場の人間が判断すればよいのです。
自発的意思に基づいて研究にあたるかどうかで、熱の入り方が変わります。社員が目の前の仕事に対し、「自分がやらなくては」と強く思えるような環境づくりも大切です。

 

髙倉 当社は社内外での複業・兼業を認めているほか、社内起業家を支援するプロジェクトも実施しています。ウェルビーイングにつながる事業であることを前提に、社内ピッチコンテストなどを経て、起業するというフローです。これまでに、4社の合同会社が立ち上がりました。社員がやりたいことの全てを、社内の本業だけで叶えるのは難しいため、こうした制度をつくりました。制度の土台には、一人の人間として、プロの仕事人として、両方の視点から個人を尊重したいという思いがあります。
 

原山 自主的・主体的に何かを体験したり、知識を獲得したりすることはまさに「学び」であり、人の成長にとって大切なものなのです。社員の学びの機会を広げる仕掛けづくりは、企業の知恵の絞りどころではないでしょうか。人は自分なりの価値観を持っていますが、凝り固まりすぎると変化や成長をしにくくなる。時に新しい刺激に出会うことも必要です。

心に火をつけ将来価値の創出へ

太田 これからの時代、一人ひとりの社員にとって、企業で働くことはどのような意味があるのでしょうか。

薗田 一番の醍醐味は、多くの人と共に事業をやり遂げることで、一人では味わえない達成感や喜びを共有することではないでしょうか。
これまで、効率や採算を重視するあまり、働くことの意味や社員の幸せを頭の片隅に追いやってきたと反省しています。効率の追求が間違いだとは思いませんが、「何のために働くのか」は避けられない問いです。自分なりの答えをもって日々の仕事にあたりたいと思います。

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髙倉 働くとは、人が動くと書きます。動かすのは人の心です。情熱をもって仕事をする人は、周りの人の心を動かします。情熱に感化された人たちの心が高鳴り、「共に働こう」となれば、組織が動き出すのです。
今、人的資本経営の実現に向けて社会が動いています。人的資本は、人の心に火がつかなければ、資本要素としての価値を発揮しません。企業は、人の思いに焦点をあて、将来に価値を創出する組織となる必要があります。

 

原山 これまで、企業にも社員にも、働くことの意味を問い直す時間があまりにもなさすぎました。
仕事で最低限の生活の糧を得られたなら、「自分はなぜ働くのか」という問いが自然と生まれるでしょう。それは自分の存在意義の問い直しでもあるのです。
今ある働き方がベストだと考えるのではなく、「働く」ことをあらゆる角度から見直してみてほしい。そこには、企業や働き方の未来を大きく変えるヒントがあるかもしれません。